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イスラエルの鼓動 20006
中東の外観と内部事情 (ウィリアム・E・カリー牧師)
 
中東の水問題は将来危機の火種
 
 暗殺されたイスラエルのイッハク・ラビン前首相はかつて「もし中東の諸問題すべてが解決できたとしても、水問題で納得できる解決を得なければ、我々の土地は大衝突を避けられない。」と発言した。(エルサレム・ポスト紙2000年3月13日より)
 
 私が中東の水問題の深刻さを実感したのは、2年ほど前ベツレヘムにいた時のことだ。アラブ人信者で、25年前に私が救いに導いた男性と、昼食後市内を車で走っていて、大型のタンクローリーの後ろについてしまったのだ。なにかの液体が、そのポンコツローリーの上から漏れて流れているのがよく見えたので、私は友人に「このようなデコボコ道を走るならば、もっと注意深く走らないとね、」と言ったところ彼は、「あれは給水車です。我々の一週間分の水を運んでいるのです」と答えた。そして「ベツレヘムは現在、イスラエル水道局から給水を受けられなくなっている」と教えてくれた。住民はトイレの水まで、すべての水を購入しなければならない状態である。“水漏れポンコツ・ローリー”はベツレヘムの町のサイズからすれば、とても貧弱な給水手段ではあるが、現在のところ代案はない。ベツレヘムの給水はイスラエル政府によって止められ、日干しにされようとしている。1998年の干ばつ時に、シャロン谷のオレンジ畑は水不足で収穫が無く、綿花やアボカドでさえ大打撃を受けた。農家もキブツでさえも失業状態なのだ。
 
 水不足は最近に始まった問題ではない。1991年私たちはイスラエルに住んでいたが、多くの農家が水不足のために、全収穫を失ったということをよく耳にした。政府は干ばつの保障のために多額の予算をつぎ込んでいた。現在でも政府はかなり厳しい飲料水の給水制限を実施している。私がケレム・シャロームというキブツで、毎週聖書研究会をしていた時、そこではテルアビブの汚水処理場から出てくる水を使っていた。キブツの水道担当者は、飲用としての基準を十分満たしていると説明していたが、誰一人(私も)彼のことばを信用していた者はいなかった。
 水不足はイスラエルだけの問題ではない。イスラエルの“水がめ”であるキンネレト(ガリラヤ湖)は、同時にヨルダンとパレスチナの水源でもある。キンネレトはこの冬、たくさんの雨とヘルモン山の豪雪の雪解け水があったのにもかかわらず、標準水位よりもかなり下回っている。キンネレトのすぐ上の小さな町、ギヴァット・アヴィニに住んでいるイスラエル人の友人が、この4月に私を見舞いに来てくれたが、彼は毎日、湖を見ているが、2年前まできれいな砂浜だった所が、最近はすっかり干上がって、乾いた石だらけの所になってしまっているそうだ。彼は水不足と美しい景観を失ったことを嘆いていた。この素晴らしい水がめも、水の浪費と湖面の蒸発によって、やがて塩水湖に変わってしまう恐れがあるのだ。もしそうなってしまえば、誰も元に戻すことはできない。
 
 世界銀行によると、ガザ地区に住むパレスチナ人一人1日あたりの使用可能水量は、アメリカ人の800ガロン(3トン)に対して、わずか15ガロン(56.3g)である。ヨルダンの首都アンマンの水不足はもっと深刻で、自治体が供給する水道が使えるのは、一週間で24時間だけだ。その他の時間はベツレヘムのように、給水車の水を買わなければならない。昨年ヨルダンの王位についたアブドラ新国王も「将来の戦争は土地問題ではなく、水問題だ。」と言っている。(エルサレム・リポートより)
 
 ナイル川はすでに、エジプト国民の需要に耐えられない。シリアは頼れる水源が枯渇してしまっている。エルサレム・リポートの報道では、昨秋人口300万人のダマスカスで、一週間に3、4日も断水していたという。ユーフラテス川からパイプラインを引くだけの資金が無いシリアは、キンネレトの水を欲しがっている。現在暗礁に乗りあげているイスラエルとの和平交渉の中で、シリアはゴラン高原の全面返還を求めているが、それはガリラヤ湖岸までを要求しているのである。私は個人的に、イスラエルとシリアの交渉決裂の原因は、この水問題であると睨んでいる。
 
 中東の水危機に対して、イスラエル政府はどのような対策を持っているのだろうか?イスラエルではよくあることで、将来の重大危機の可能性には、小手先の対応ではなくて、かなり大規模の作戦を計画しなければならないのであるが、、、1990〜91年の干ばつの後、1992年には充分な降水量があったため、水不足の危険性指摘に対して楽観視していた。しかし92年の降雨量は200年に一度の多雨だったのである。これは非公式の数字であるが、毎年イスラエル、ヨルダン、パレスチナは合計で、32億トンの水を使っているそうである。しかし毎年の降水量は25億トンに過ぎない。イスラエル一国をとってみても毎年3,000万トンづつ、需要が増えている。だから「多雨の年を待つ」というのは、全く答えにはならない。
 
 1999年に、イスラエルの報道機関が政府に渇水対策を迫った。1999年6月25日付のハ・アレツ紙の社説で、ある有名紙の記者の発言が出ていた。「…多くのイスラエルの水問題担当者が到達した結論では、現在の水不足は1990〜91年の干ばつの時より深刻で、史上初めて飲料水にまで危機が迫っている。長い目で見れば、イスラエルは海水の淡水化を積極的に進めて行かなければならない。イスラエル人の傾向として、“これはただ我々の小問題だ”と思っていると、その先に悲惨な結果が待ち構えているのだ。…」
 
 私の親しい友人で、イスラエル在住の国際的に知られた専門家は、私に宛てた手紙(本年3月5日付)の中で、ハ・アレツの記事と同様のことを記していた。「1998〜99年の干ばつは、過去50年で最悪のものであった。…しかし政治家たちは水危機の深刻さを重要視していない。1990年以降政府機関は、次の大干ばつに備えて巨大な淡水化施設の予算準備が必要だと言っているが、今まで何もしていない。水道局は巨大な淡水化施設の開発を求めているが、大蔵省はなかなか必要な資金を供給しようとしない。」
 地中海岸で淡水化施設を開発するのは、政治的にも実際的にも、慢性水不足の中東において最も実現可能な対策である。これはまた、イスラエル下部組織大臣エリ・スイッサを含む、多くの専門家たちの支持するところでもある。
 
 その他の対策は実現不可能か、少しこっけいな物である。レバノンのリーターニ川からの地下水道トンネルという案は、レバノンとイスラエルの間で完全和平が成立するまであり得ないので、近未来には不可能である。トルコの前大統領トルグット・オザルの案によると、水の豊富なトルコからシリア、イスラエル、ヨルダンとをパイプラインでつなぐ案は、莫大な費用の分担が必要となり、トルコとシリアの友好関係にかかっている。またトルコの別の案は、オイルタンカーを修理して水運搬に使うか、タグボートでプラスチックの巨大な容器詰の水を牽引して、地中海を渡りイスラエルに輸出する、などいろいろと出ている。トルコのスレィマン・デミエル現大統領は「この方法のほうが淡水化施設よりずっと安くつく」と言っている。しかし彼の水交渉の裏取引は、トルコ空軍の新鋭化にイスラエルの協力を取りつけたいからである。他にもイスラエル政府に相手にされなかった案で、アラスカから巨大な氷山を船でイスラエルまで牽引して溶かして使うというものもあった。(1999年6月25日付、イスラエラインより)
 
 淡水化というのは新案ではなく、イスラエルでは長年検討されていることだ。しかし1998〜99年の大干ばつの時でも、政府の対応は遅々としていた。1999年3月8日付のイスラエライン報道では、イスラエル内閣での討論を取り上げ、「アリエル・シャロン外務・国内下部大臣とラファエル・エイタン農業大臣提出の“新世紀までに淡水化施設を実現する”企画に、今年中にとりかからなくてはならない。…内閣の試算で、淡水化施設の開発には、2億ドルの予算上乗せが必要という…」
 
 シャロン&エイタン案の淡水化施設は、中東全域のために大きな利益となる。1999年4月15日にドイツのシュトゥットガルトで行われた外相会議のスピーチで、シャロンは「イスラエルと近隣諸国の直面している危機は、水不足と砂漠化である」と言って、淡水化施設の開発を訴え、「向こう10年〜15年のあいだに、年産10億トンの淡水化が可能となれば、現在の水不足を解消するだけではなく、将来のイスラエルとパレスチナ、またシリアにまで益をもたらす。」と言明した。淡水化はそれほど周辺諸国にまで影響を与えるものであるため、「先進諸国や企業の積極的投資を、イスラエルとアラブ諸国にしていただきたい。」とアピールしたのだ。(1999年4月16日付、アルツ・シェバ、ニュースサービスより)
 シャロンのスピーチの1年後、2000年4月17日、イスラエル政府経済委員会は、年産5,000万トンの淡水化施設のため、予算1億5,000万ドルを計上した。イスラエルもようやく水危機の対策を実行に移した。外相会議でシャロンが提唱したものが、そのまま実現するかは今後を待たなければならない。しかし問題は続いて残っている。イスラエルではほとんど手遅れ状態で、やっと手を打っているのが常であるため、それまでに失ってしまった国家予算の年間増収分に匹敵するほどの“過去の干ばつ被害”を修復できないままである。
 
 丁度、自然界の水を軽視していたように、イスラエルは“いのちの水”であるメシアを無視し続けている。過去数年にわたってイスラエル政府の要人たちは、いろいろな方法で福音を伝えることを妨害する「反宣教法」や他の手段を用いて、信者たちに圧力をかけようとしてきた。神のみことばは“この民の心を潤す水”であるが、未だに多くの人たちには無縁である。しかし伝道を妨げれば妨げるほど、魂の収穫の力が現れるのも福音の力である。
 この土地で干ばつよりもっと深刻なのは、霊的危機である。どうかイスラエルのために祈っていただきたい。多くの失われた人たちのために、また迫害・困難の中で証しを続けている信者たちのために。
 
イスラエル寸描  ご存知ですか?
 
イスラエルの五大都市は? エルサレム(633,700人)、テルアビブ・ヤッフォ(348,100人)ハイファ(265,700人)、リション・レツィヨン(188,200人)、ベェル・シェバ(163,700人)
 
イスラエルの人気の高い、四大観光地は?
エイラート(42%)、死海(13%)、ティベリア(12%)、エルサレム(6%)
 
イスラエル人が最も多く購入する食品は?
Tnuva社の5% コテージチーズ、毎月850万箱販売されている。 (マ・アリブより)
 
若さに期待するメシアニック会衆
 
 メシアニック・アクション委員会によれば、約6,000人のメシアニック信者の三分の一から半数は、続いてイスラエル社会の少数派である。現在の指導者たちは、移民信者たちが多数を占めているが、まもなくその子弟たちが成長すれば、より立場上も、語学的にも、部外者的存在から脱却できるようになる。これは少数派として、肩身の狭い思いをしている者たちにとって朗報であろう。
               (AMFインターナショナル発行 邦訳;石黒イサク)
 
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